前回、カバードコールのパフォーマンスについて分析した記事において、コール売りのパフォーマンスを取得しているので、本記事ではコールオプションのパフォーマンスについて分析してみたいと思います。
コールオプションの買いとは

コールオプションを買い続ける戦略の目論見
プレミアム(権利料)を支払うことで、対価として損失限定で権利行使価格以上の値上がり分を丸ごと利益として受け取る権利を得ます。相場には下記の3局面がありますが、大きく上昇する局面でしか利益を得ることができず、その他の月はただプレミアムを支払った分だけ損失が発生します。
- 相場が大きく上昇する
- 相場があまり動かない
- 相場が大きく下落する
コールオプションの買い手にとって一番うれしくないのは「2.相場があまり動かない」です。「3.相場が大きく下落する」はコールオプションの買い手も損ですが、株式を保有している投資家のほうが損失が大きいので、コールオプションの買い手は相対的に勝っています。
大切なのは、相場の大きな上昇で得る値上がり益がプレミアムの支払に対して釣り合いがとれるかどうかです。
コールオプションを買い続ける戦略のパフォーマンスの調べ方
コールオプションの具体的なパフォーマンスについて説明されている記事は少ないですか、前回の記事で、実はアメリカのシカゴ・オプション取引所(CBOE)では、カバードコール指数を公表していることをお話しさせていただきました。
カバードコールを分解すると次のポジションになります。
カバードコール=S&P500+コール売り
上の関係よりカバードコールとS&P500のパフォーマンスがわかればコール売りのパフォーマンスがわかり、符号を逆転させればコール買いのパフォーマンスがわかります。
コールオプションの時系列データを求めて期待リターンやシャープレシオを推測し、それらを株式指数と比較してみましょう。
S&P500コールオプションのパフォーマンス検証
コールATMを買い続けるケース
比較対象指数
- S&P500
- コールATM買い
期間:2000年1月~2021年8月

S&P500コールATM買はS&Pに対し、シャープレシオが悪化してしまいました。損失限定がメリットなコールオプションのイメージに反してS&P500コールATM買の最大損失が-30.19%と大きいのは、権利行使価格以上に上昇しない月が連続したためです。
コールATMを5倍買い続けるケース
コールオプションの損失はあらかじめ確定しているため、自己資金額に合わせた範囲で大きなレバレッジをかけても破産しないのがメリットでもあるので、コールオプションを5倍買い続ける戦略も検証してみました。
比較対象指数
- S&P500
- コールATM買い
- コールATM買い×5
期間:2000年1月~2021年8月

コールATMを5枚ずつ買ってようやくS&P500のパフォーマンスに追いつきました。しかし、最大損失は-93.17%とひどい値を記録してしまいました。S&P500の2倍に連動するETFを購入するほうがマシでしょう。
続いて日経平均コールオプションのパフォーマンス検証
比較対象指数
- 日経平均
- コールOTM5%買い
- コールOTM5%買い×5
期間:2000年1月~2021年8月

コールOTM5%を買い続ける戦略も、日経平均に比べシャープレシオが悪化してしまいました。しかし、相関係数は0.529と分散投資先としてはなかなか悪くない値になっています。コールオプションの買いで注目したいのは2020年3月のコロナショックにおける株式相場暴落と、2021年2月までのコロナバブルです。本来コールオプションは一定以上の値上がりには強いはずなのですが、プレミアムの支払額を補うことができず、株式相場と比べいまいちな結果で終わってしまっています。
実は、相場が暴落したときは、リバウンドによる大暴騰が発生する可能性が高いので、コールオプションは高いプレミアム(高いIV)で取引される傾向になります。大きな上昇を損失限定で利益にしたいと考える投資家が、コールオプションを高く買い上げていくためと解釈できます。高いプレミアムを賄うだけの相場上昇がなかったため、コールオプションを買い続ける戦略はコロナバブルでは不発に終わってしまいました。
結論
- コールATMを買い続ける戦略のシャープレシオは株式指数に劣る
- コールATMを大きなレバレッジをかけて買い続けてようやく株式指数と同等のパフォーマンスを得る
カバードコールも、コールオプションも、株式指数にはシャープレシオでパフォーマンスが劣ってしまうことがわかりました。賢明な投資家はコールオプションを触ってはいけないということかもしれませんな。