コールオプションの期待リターンについて

コールオプションの期待リターン

皆様コールオプションについてご存知でしょうか。コールオプションというものは一定の額を払うことで一定以上に値上がりした時にその旨だけはを収入として抑えることができる権利のことを指します。でも、コールオプションが具体的にどの程度の期待リターンを持っているのかについて解析されている書籍やブログについてはほとんどないと思います。そこでこの投稿記事ではコールオプションが実際どの程度の期待リターンを持っているのか、なぜその期待リターンを持つのかといったことについてご説明させていただこうと思います。

実はアメリカではオプション戦略を用いたパフォーマンスがグラフとして提供されております。cboe という企業が公表しているカバードコール指数というものがあるのですけども、この指数はS & P 500買ってATM コールオプションを売り続けた場合のパフォーマンスを指数化したものです。グラフを見ていただければ分かるのですが、カバードコールというものは実際に S & P 500に単純に保有する場合と比べてパフォーマンスが下がってしまうんですね。コールを売ったぶんだけパフォーマンスが悪化したということなんですけども、具体的な数値列は以下のようになりまして、このコールの売ったぶんだけ損するということは逆に言えばコールを買えば儲かるということなんですね。

逆に、単純なコール買いを行った場合のシミュレーションを行うと右のようなグラフを得るんですね。右肩上がりであることが分かると思います。期待リターンについて具体的な数値を見るとコールオプション ATM の買いはS & P 500のちょうど半分ぐらいのリターンをたたき出していることがわかります。一方でシャープレシオの方は S & P 500に投資した時と比べて悪くなっていることがわかりますね。

何でコールオプションのリターンが S & P 500のちょうど半分ぐらいになるのかというと、いわゆる効率的市場仮説というものが関係してくるんですけども、効率的市場仮説というものはアメリカであればアメリカの株式を買っても平均をコンスタントに上回ることはできませんよ、個別株を運用するのは無駄な努力なので大人しく S & P 500を買いましょうよという話なのですが、exposure という概念がありまして S & P 500に対して対するベータ値がどれほどあるかで資産運用パフォーマンスが決まってくるという話があるんですね、あくまで理論上の話なんですけども。単純に言えば、S & P 500のリターンが10%だとして、S & P 500に属する個別株式のベータ値が1ならその個別株式の期待リターンは10%、ベータ値が0.5ならば個別株式の期待リターンは5%、というような関係です、あくまで理論上の話ですけども。

オプションにはデルタ値という概念がありましてこれは先ほど申し上げたベータ値と概念が似ているんですね。例えばコールオプションの ATM のデルタ値は0.5なんですけどもこれはその株式指数を0.5個ぶんだけ購入しているのと同義なんですね、そうなるとオプションの ATM のデルタ値が0.5の期待リターンは S & P 500の0.5個ぶんの期待リターンを持っていることになるんですね。オプションのデルタ値は満期に向けて刻一刻と変わるので直感的な理解はなかなか難しいところなんですけども、例えば1日ごとにデルタ値0.5のコールオプションを買い直すオペレーションを考えてみると分かりやすくなると思います。1日ごとにコールオプションデルタ値0.5を買い直す場合、常にデルタ値0.5の株式指数お持っているのと同様の効果を期待できますので期待リターンは株式指数の0.5になります。もし期待リターンが0.5にならなかった場合、そこに最低取引の機会が発生してしまいます。例えば出るデルタ値0.5のコールオプションの期待リターンが株式指数0.5相当のリターンよりも高いことが分かったら投資家が株式指数を購入するよりもコールオプションを購入するでしょう。逆に株式数0.5相当のリターンよりも低いことが分かれば投資家は株式指数を購入してコールオプションを売ることで利ざやを稼げるでしょう。投資家による株式指数を買うかコールオプションを買うかというシーソーゲームの結果、コールオプションの価格はちょうどいい値に落ち着くことになります。

以上は理論上の話になるんですけども、現実的にはオプションの価格は市場効率的ではなく、例えばプットオプションのはしっこは実力よりも高い値段が付けられていることがよく知られています。これはブラックマンデーを契機として超短期的に価格が下がってしまうケースに対する保険料としてに付けられているわけではありますが、とにかく、各オプションが持つデルタ値と実際の株式指数のリターンを比較することで、どのオプションが割安で割高なのかが分かるのだと思います。

よくオプショントレーダーがコールオプションの持つデルタに対して先物を売ることでデルタをゼロにすることをよくやっているのですが、その合成ポジションのデルタは0なので株式指数に対する感応度が0であることを意味します。つまりその合成ポジションの期待リターンは理論上ではゼロであることを意味します。しかし現実的にはインプライドボラティリティの値によってその合成ポジションの期待リターンはプラスにもマイナスにもなります。期待リターンがプラスであればインプライドボラティリティは割安期待リターンがマイナスであればインプライドボラティリティは割高であるということです。オプションに対して先物を合成してデルタをゼロにしたポジションを使ってバックテストを行えばそのオプションの真価を問うことができるはずです。

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