債券は値動きがある資産だが、株式と違い満期まで持てば必ず額面価格で償還される。返済の滞りやデフォルト等のリスクがあるが、特に国が発行する国債の信頼度は高い。企業が発行する社債やハイイールド債は景気動向に左右され、肝心なときに株式と一緒のタイミングで下落してしまうため、株式のクッションとしてポートフォリオに組み込むことは難しい。
株式は過去200年間成長し続けた実績がある資産だが、10年に1回ほどある金融危機等のショックに弱く、際限なくレバレッジをかけることはできない。(レバレッジをかけると破産してしまう)
そこで、債券にレバレッジをかけて株式と同等かそれ以上のリターンを得る手法について考える。金融危機に耐性があり大きく資産を伸ばせるのではないかとの目論見である。
債券×レバレッジの実際
債券と株式を比較する
債券にレバレッジをかける方法は個人投資家には限られている。しかし、投資信託や海外ETFに債券にレバレッジをかけた商品があり、日本の証券会社からアクセスできる。
代表的な金融商品が海外ETFの米国20年超債券3倍ブルだ(ティッカーコード:TLT)。米国20年超債券のデュレーションは15~16と高い。これは金利が1%上昇すると債券価格は15%下がることを意味する。
日本に上場している代表的な債券商品を表にした。信用取引を特にETFは信用取引を行うことでレバレッジをかけることができる。(信用取引はコストが高いが…)
コード | 名称 | 債券 |
2620 | iシェアーズ 米国債1-3年 ETF | 米国債1-3年 ETF |
1656 | iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF | 米国債7-10年ETF |
1482 | iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF(為替ヘッジあり) | 米国債7-10年ETF(為替ヘッジあり) |
2621 | iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり) | 米国債20年ETF(為替ヘッジあり) |
-(投信) | 野村-野村ブル・ベア セレクト8 米国10年債4倍 | 米国10年債4倍ブル |
-(投信) | usa360 | バランスポートフォリオで米国5年債1.35倍ブル+米国10年債1.35倍ブルを含む |
-(投信) | グローバル5.5倍 | バランスポートフォリオで先進国各国債券400%を含む |
海外ETFに投資できる方はROKOHOUSEさんの記事で表を作成されているので参考にしてみてほしい。
債券と株式を比較する
まずは米国20年超債券の値動きを株式インデックスと比べてみよう。
今回はStdev(標準偏差)に着目してほしい。株式とほとんど変わらないはずだ。

2010年代は株式が絶好調の期間だったので、株式の標準偏差はもう少し高く見積もっておいたほうがよいかもしれないが、リスク量で釣り合うバランスは株式100に対し20年債100~150(デュレーション15~24相当)といえそうだ。
債券にレバレッジをかけて株式と比較する
次に 米国20年超債券3倍ブルの値動きを株式インデックスと比べてみよう。
株式とほぼ変わらないリターンを得ることができたが、Stdevが39.20%と非常に高い。
(下のグラフを見ていただければわかるが、赤線の大きな値動きをしているのは株式ではなくなんと債券である!)

レバレッジをかけておいてあれだが、これでは債券は安全資産とはとても思えない。
Us Mkt Correlation(米国株式との相関係数)は-0.45と小さいので分散投資としての相性はよいが、株式と同様に際限なくレバレッジをかけるのは難しいだろう。
債券のリスク・リターンは残存年限毎に異なる
実は年限毎に債券のリスク・リターンは変わってくる。米国債券5年、10年、20年のパフォーマンスを比べてみよう。

短い年限の国債ほどStdevが小さいことがわかる。また、Sharpe Ratioも短い年限の国債ほど大きいことがわかる。
米国7~10年債と米国20年債のパフォーマンスに注目すると、CAGR(年間資産成長率)は半分以上あるのにStdev(標準偏差)は半分以下しかない。リスク当たりのリターンがよいのだ。そのため、米国7~10年債にレバレッジをかけると米国20年債よりも少ないリスクで高いリターンを得ることができる。
債券投資におかれても、高いシャープレシオを追求していくことが大切なのである。
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