日経平均のバイアンドホールドとは
日経平均に投資する意味
日経平均のバイアンドホールドとは、日経平均を買って保有することである(バイ=買う、ホールド=保有する)。日本企業に限らないが、世界の企業は昨年よりもいい商品・サービスの提供・拡大のために、互いに競争している。昨年よりも今年、今年よりも来年、と、よりより商品・サービスの提供ができるようになれば企業は売上や利益を成長させることができる。これは株式の時価総額の増加につながる。また、株式は経営活動で生じた利益のうち余剰分を配当というかたちで株主に分配しているが、利益が成長すれば配当に回す余剰もその分成長する。日本の、いや、世界の株式に投資することは、企業努力に投資することを意味する。
株式の期待リターン
将来の株式リターンは誰にもわからないが、過去の株式実質リターンをみると年6~7%に落ち着くようだ(シーゲル教授が著された有名な本「株式投資 第4版」)。金融市場には株式の他に債券、金、預金等の資産があるが、高いリターンが必要なら株式投資を選択肢から外すことはできない。

ブルシンセティックとは
ブルシンセティックとはプットを1枚売ってコールを1枚買うポジションのことである。
ブルシンセティックは一般的には高いIVを売って低いIVを買うことになるので、期待値がプラスになるのではないかと考えることができる。ATMから離れたストライクの場合、距離が同じならコールよりもプットのほうが価格が高くなる。
日経平均のバイアンドホールドvsブルシンセティック
レバレッジ1倍での比較
過去の日経平均データととある日のオプション市場の値付けから、プットオプションを売ってコールオプションを買うポジションが日経平均に対しどうパフォーマンスしてきたかをシミュレーションする。わかりやすさのため、コールオプションと同じ値段のプットオプションを売ってゼロコストにしたブルシンセティックポジションを組成し日経平均とのパフォーマンス差を比べてみた。下がその結果である。

原資産である日経平均と比較するとパフォーマンスがいくらかなめらかになっている。が、わざわざゼロコストブルシンセティックを組まずとも日経平均を購入すればいいともいえる。
レバレッジ2倍での比較
下は日経平均の日々の値動きに2倍をしたものとブルシンセティックを2倍組んだものを比較したものである。日経平均2倍は日経平均に対し劣後している。これは日経平均のリターンに対しボラティリティが大きいため、バックテスト期間の上昇下落による減価の影響が大きくなってしまったためである。特に象徴的なのは2008年9と10月の世界金融危機、2020年3月のコロナショックで、日経平均2倍はあまりにも大きく下落してしまい回復ペースが緩慢であった。一方、ブルシンセティック2倍は日経平均2倍に比べて落ち込み幅が小さくパフォーマンスも優位に推移していた。ブルシンセティック2倍のほうが日経平均2倍に対しバックテスト期間の上昇下落による減価の影響を小さく抑えることができたためである。

(シミュレーションに使用したオプションとそれぞれのパフォーマンス値は下表のとおり)

ゼロコストブルシンセティックはデルタ値は日経平均よりも小さい。これは、ゼロコストブルシンセティックのほうが日経平均を単純にバイアンドホールドするよりも値動きが小さいことを意味している。ゼロコストブルシンセティックのほうがデルタ値が小さいぶんだけ月次リターンも小さくなるのは当然で、ゼロコストブルシンセティックの期待リターンは理論的には日経平均の月次リターン×ゼロコストブルシンセティックのデルタ値、すなわち0.61×0.4=月次リターン0.246%であるが、バックテストで測定された月次リターンは0.46%で大きい。これは日経平均のベータに対する超過リターンアルファとして獲得されたものと考えられるだろう。
(補足)オプションのデルタ値と期待リターンについて
オプションの期待リターンはオプションが持つデルタ値に比例する。デルタ値とは、日経平均をいくらバイアンドホールドしていることに相当するかを示す値である。もしオプションの期待リターンがデルタ値と比例しないことがわかると、オプションと日経平均との間に裁定取引が成立しうるためだ。簡単な説明のために、デルタ値0.5のコールオプションを売ってデルタ値1.0の日経平均を買うカバードコールポジションを考える。カバードコールポジションのデルタ値は1.0-0.5=0.5だが、ここでもしコールオプションの期待リターンがマイナスである場合、カバードコールポジションは日経平均よりも小さい価格変動リスクでより大きなリターンを期待できてしまう。日経平均よりも魅力的な投資対象が出来上上がり、カバードコールを組成するためにオプション市場に参加する投資家がコールを売ることになる。すると、コールは価格が下がり、最終的には日経平均とカバードコールの投資対象としての魅力が等しくなるまで売られる。こうしてコールオプションの価格は十分に下がり、期待リターンがプラスになる。理論的には、コールオプションの持つデルタ値のぶんだけ日経平均に由来するリターンを期待できることになる。
まとめ
- 株式指数の長期的な期待リターンは年6~7%
- ブルシンセヒックポジションは日経平均よりもリスク当たりリターン(すなわちシャープレシオ)が大きいため、日経平均よりもレバレッジをかけるのに適している。