賃貸中のファミリーマンションを購入して空室後に実需層に売却する手法について

賃貸中のファミリータイプのマンションを購入する投資法ってありますよね。賃貸契約が続けば家賃を振り込んでもらって、契約が切れて空室になれば実需層に自分が購入したときよりも高い価格で売却するという目論見を持っています。不動産中古再販会社スター・マイカ(株)が採用していた戦略で、上場後に有名になった手法です。今日でもこの手法が有効なのか、分析してみようと思います。

目次

ファミリータイプマンションを実需向けに転売する手法の目論見について

通常、不動産市場は投資家向けにキャップレートに基づいて取引価格が設定されていて、どの物件を選んでもキャッシュフローは大体同じ利回りに収束していきます。逆に、市場のキャップレートからマンションの価格を逆算することができます。銀行が不動産投資家向けにローンを提供するときに、そのマンションの担保価格を算出するのですが、収益還元法がそれです。

一方、不動産は実需向けの市場が存在します。一生この家に住みたい、ライフスタイルが変わるまでこの家を買って住みたい、というときに、人はその家を買うことを考えます。不動産投資家との大きな違いは、自分で住むために家を買う人には非常に低金利の住宅ローンが利用できるという点、内法面積がさらに一定以上なら住宅ローン減税の恩恵を受けるという点です。同じ物件をローンを利用して購入する場合、投資家よりも実需層のほうが有利に取得できることになり、ある程度高く買っても採算が合うということになります

さて、不動産が市場に売りに出されたとき、もしその不動産が実需向けに利用できるものであれば、一般的なアパートローンしか利用できない投資家と、住宅ローン及び住宅ローン減税を利用できる実需層とでは、実需層のほうが高く買えることになります。住宅ローン減税が使えるマンションが空室状態で販売されていたときは、投資家よりも実需層のほうが有利に購入できます。なので投資向けよりも高い価格で買われます。

もし実需向けに利用できる不動産が賃貸中の場合、実需層はその物件を実需を理由に購入することができないため、投資家と同様に一般のアパートローンしか利用できません。その不動産は投資家向けの価格で取引されます。しかし、その不動産が空室になれば、実需層は自分で住むことを理由に住宅ローン及び住宅ローン減税を利用できます。高い価格で取引されることの理由になります。

目論見と現実

しかし、この手法が成立する場合、投資家は高いリターンを期待して賃貸中のファミリータイプのお部屋を選好して購入していくため、だんだんと価格は実需層向けに取引されている価格に近づいていき、旨味はなくなっていくはずです。実際にはその中間あたりで落ち着いていると思うのですが、果たしてどこまで成立しているのでしょうか。

不動産投資家向けサイト「楽街」と実需層向けマンション評価サイト「マンションレビュー」を用い、同一タイプのお部屋が投資家と実需層向けでどのように価格が違うか調べてみました。表面利回りの対象で比較します。表面利回りが高いほうが安いです。

勝どきのタワーマンション「THE TOKYO TOWERS SEA TOWER」の場合

実需層向け価格(表面利回り4.15%)>投資家向け価格( 表面利回り 4.73%)

「亀戸レジデンス」の場合

実需層向け価格 (表面利回り5.46%) <投資家向け価格(表面利回り4.80%)

「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」の場合

実需層向け価格 (表面利回り4.20%) >投資家向け価格 (表面利回り4.72%)

全体の傾向について

他にも同一物件で投資家向けと実需層向けの表面利回りを比較してみましたが、どちらが高い価格で取引されているかについては物件によってケースバイケースです。同じ物件でも提示価格はまちまちなので、高く買わないようにあらゆるサイトで相場を見ておくのは正解だということだけは確かです。

(強いて言えばタワーマンションに関しては実需向けに売却する戦略が通用しそうといったところです。成立する場合でもなぜ通用するのかを考察しなければいけませんね。)

まとめ

  • ファミリータイプの物件について、投資家向けと実需向けの二つの価格が成立する可能性があるが、明確な傾向は見受けられない
  • 同じ物件でも販売価格が異なる可能性があるので、過去の取引事例や周辺物件の価格を比較検討し、高く買わないようにする。
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